〜島原市有明町大三東の風除祭〜
イベント/しましま
2016/8/29 9:00

“はなだごさん”が追いかけてくる!インパクトが大きい伝統儀式。

2016年8月24日、島原市有明町で風除祭が行われました。
有明地区では毎年3つの地区で風除祭がおこなわれますが、今回お邪魔したのは大三東。


風除祭とは・・・

読んで字のごとく、「風」を「除」けるように祈るお祭りです。
雑節の中の一つに、二百十日(立春を起算日として210日目)と呼ばれる、強い風が吹いたり台風が比較的多いとされる日があります。
そこで農家さんが手塩にかけお世話し、ようやく顔を出し始めた稲穂達を強風から守ろう!と台風が来ないように氏神様にお願いをします。

風除祭には「お下り」と「お上り」があります。

「お下り」=山側にある温泉神社に祭られている神様を御神輿にのせ周辺を練り歩き、海側にあるお旅所江崎神社まで神様をお送りする儀式

「お上り」=江崎神社に送った神様をまた練り歩きながら、温泉神社にお返する儀式


出発地点の温泉神社

大三東は5つの自治体からなっており、毎年ローテーションで「お下り」と「お上り」と分かれて担当します。
自治体次第ではありますが、8:30前後に温泉神社の境内に集合し、御神輿や練り歩きに参加する方々を清めます。
その後お旅所である江崎神社までに巡るルートの案内を終え、いよいよ出発!


この時間帯になると近所の子ども達がソワソワしはじめ、周辺のお母さん達も赤ちゃんや幼いよちよち歩きの子ども達を連れて道路際に集まりキョロキョロと辺りを注意深く見渡します。

ここでいきなり、ひょんな所から出没するのが「はなだご」です。

この天狗の様なお面をかぶった「はなだご」は、お旅所へと続く道を清めながら走り回り、道案内をする役割を担っています。

「はなだご」は日本神話で言うサルタヒコノカミの事で、ニニギノミコトの天孫降臨の際、地上まで案内をしたという道案内の神様です。


その時、町や人々を清める時に使うのがヘグロと呼ばれる炭の粉です。


「はなだご」からこれを顔いっぱいに塗り付けられると、風邪や病気をしないというご利益があり、大変縁起の良いものとされています。


ところが、近所の子ども達はこのヘグロを塗り付けられないようにと、猛ダッシュで逃げ回ります。


全力疾走で追いかける「はなだご」。
まさに疾風の如し。
マンガのように「ビュン!」と風を切る音が聞こえます。

真夏の炎天下の中、息もしにくい状態で尚かつ、トップスピードで走り続けるのですから、相当な脚力の持ち主が選ばれるのでしょう。

しかし、中には陸上選手並みの早さで走る子もいて、なかなか追いつかない時も・・・。
それでも彼らは走ります。
少年少女たちは、ご利益が欲しいのか、あるいは欲しくないのか、逃げ切ったとしても、自らこの「はなだご」を探し出し、追い回されるのです。

これがお旅所に着くまでエンドレスで繰り返されます。
街全体をひっくるめた鬼ごっこのようでした。


そうこうしているうちに、遠くの方から「センザイ!マンザイ!」のかけ声と共に、軽快なリズムを響かせる太鼓の音色が。
御神輿と担ぎ手達の登場!


今回お話を伺った温泉神社宮司 青木さん。

かけ声の「センザイ!マンザイ!」とは漢字で書くと、千歳万歳(せんざいまんざい)となり、千年も万年も末永く続きますように、という意味があります。


有明中央ショッピングセンターや心香保育園、島原市役所有明庁舎など色々な場所を回り、海を目指します。

恐怖におののく子ども達。


ヘグロを塗られて嬉しそうな子もたくさんいました。


グッと涙を堪える子も。


保育園に突如現れるはなだごさん。


有明町では、子どもを叱るときに「はなだごさんがくるよ!」と脅かします。
その効果は絶大。
そういうわけで、はなだごさんは、大人達にぜひ来てください!と呼ばれることもしばしば。


おそるおそる、ピース。


年長さんともなると、へっちゃらです。


お熱で保育園に行けなかった男の子も、はなだごさんにヘグロを塗ってもらいます。


顔に塗られてあきらめた子ども達は、練り歩きに参加する子もいました。


最終的にははなだごさんと仲良くなる子ども達。もう仲間です。


はなだごさんは、「名前なんて言うの?」と聞かれ、「ハナ・ダゴです。」と返していました。
本名を言うという、子どもの夢を壊す様な大失態は致しません。
「はなだご」役の方は2名いるのですが、もう1人の「はなだご」は「ダゴ・ハナ」さんという名前だそうです。〜子ども談〜


この子達の中に10年後20年後、御神輿を担いだり「はなだご」になったりする人がいるのではないでしょうか。

子ども達にとっては、知り合いのおじちゃんおばちゃんがいて、祭りの一員として参加できる地元のお祭りだからこそ、憧れを抱き、郷土愛が芽生え、親しみを感じているようでした。

町中を思い切り駆け抜ける子ども達の目はきらきらと輝いていました。

また別の意味では赤ちゃんの目にもキラキラとしたものが浮かんでいました。


あらゆる所を巡りに巡って、ゴール地点となる江崎神社に到着。
海に入り、神様を清めます。


風除祭に参加した有明町大三東のみなさん。
8月27日に「お上り」が行われ、江崎神社から温泉神社に神様をお返しいたしました。


風を除け、豊作を願う「風除祭」。
地域住民の土地へ対する願いや感謝の気持ち、人の絆を感じるお祭りでした。


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